思春期の月経異常:将来のために気をつけておきたいこと

2024年09月10日

学校生活や毎日の生活で、月経による症状で困っていませんか?当院に受診されている思春期女性の、月経にまつわる症状が多い順に挙げてみます。

1:月経痛

2:月経が数ヶ月発来しない

3:性器出血が長く続いたり、頻回に発来する

4:月経前や月経中に体調が悪くなる。

1、4の症状に関しては、学校に行けなかったり、保健室で休んだり早退する頻度が増える場合があります。このため症状をできるだけおさえられるように、薬を処方したり、日常生活のアドバイスをします。症状を緩和する薬で十分な効果がない場合は、月経痛のためのピルや黄体ホルモン製剤でのホルモン治療をおこないます。2,3の症状は、排卵周期が整っていないことによる場合がほとんどです。性交渉の経験がない場合は、疾患が背景にある可能性は低いため、内診はほとんどおこないません。ホルモン剤で治療しても月経が整わない場合は、ご相談の上で内診を受けていただく場合はあります。しかし性交渉の経験がある場合は、妊娠や性感染症や子宮頸がんの可能性があるため、内診が必要になります。

では思春期で排卵周期が整わないのはなぜでしょう?思春期では、間脳・下垂体・卵巣系の調節機能は未熟であるためで、月経が始まってから数年経っても無排卵周期が50%くらいに認められます。このように排卵障害からの無月経・月経不順は生理的にみられる現象であり、排卵を積極的におこなう必要はないとされています。無月経に対し、毎月月経をおこす必要はなく、2~3ヶ月に1回に月経をおこすようにします。思春期を過ぎても月経が安定しなければ、血液検査などでホルモン環境を検査することを勧めます。

知っておいてほしいことは、やせや肥満が無月経や月経不順をひきおこす可能性があるということです。標準体重を目安に、90%以下であればやせ型となり、月経が発来しにくくなります。また長期にわたる無月経では骨塩減少がみられるため、骨塩の検査を行い、骨塩の低下があれば食事指導や毎月のホルモン治療を行うことも検討します。思春期は体が大きくなる時期で、十分な栄養が必要です。標準体重の85%以上の体重になり、それが6ヶ月以上経過すると、月経が再開するとされています。標準体重を目安に体重コントロールに気をつけ、栄養バランスのとれた食事をとり、丈夫な体をつくりましょう。標準体重の70%を下回る無月経では月経を敢えておこさず、体重を増やすような食事指導やカウンセリングが必要です。食べることや体重が増えることへの恐怖心や不安感がある場合は、無理に頑張らないでください。家族のかたに相談した上で、病院を受診してください。肥満も月経不順の原因になるため、同じく体重コントロールをゆっくりでいいので始めてみましょう。

標準体重の計算(15歳以上)は以下のとおりです。

身長 標準体重
160cm以上 (身長cm-100)×0.9
150~160cm (身長cm-150)×0.4+50
150cm未満 (身長cm-100)

 

BMI値をめやすに体重をコントロールしましょう。BMI=体重kg÷身長m÷身長m

低体重(やせ) BMI値18.5未満
ふつう BMI値18.5以上25.0未満
肥満 BMI値25.0以上

 

今年は子宮頸がんワクチンの公費負担の期限が迫っているため、夏休み期間だけでなく9月になっても思春期女子の受診が多いです。思春期女性にとって、婦人科は受診しづらいですよね。子宮頸がんワクチン接種のついででいいので、月経を含めた性の悩みをうちあけてくれるとうれしいです。